ボルネオ島(2006年7~8月)



①ジャングル

(執筆日:2006年08月14日)

 私はジャングルが大好きだ。今回の旅では、総距離で150キロ~200キロ位を歩破してきた。

 ジャングルでは、いつどこで何に出くわすかも知れぬ緊張感と、全てを包み込む抱擁感が共存している。あらゆる陽の当たる空間は植物で埋め尽くされ、動物の泣き声・動く音が辺り一帯に響き渡る。大気はじっと湿っており、晴れた日でも体内から噴き出した汗がシャツをビショビショにする。突然襲ってくる豪雨が身体を冷やし、川の色を茶色に塗り替え、あっという間に氾濫させる。ぬかるんだ泥土に足が沈み、靴が泥だらけになり、脱ぐと靴下の上をヒルが蠢いている。

 ジャングルの中で自分という存在は限りなく小さい。誰かが作った道を十分な装備とともに歩いているから平気でいられるだけで、そうでなければ生存は困難だ。だからこそ「生」を実感できる。

 倒れた大木が折り重なって道を塞いでいたり、橋が落ちているところもあった。ロープだけを使って川を渡ったりもした。火蟻(ヒアリ)に噛まれて 30分ほど痛みが続いたり、ant rotanという蟻に守られたトゲトゲの植物に身体が絡まって身動きが取れなくなった上に蟻に攻撃されたりするトラブルはあったけど、かすり傷以上の怪我をすることはなかった。

 旧日本軍が石油を巡って英豪軍と激戦を戦ったジャングルにも入った。古い油田が錆びれた掘削機とともに放置されており、辺り一帯荒れ放題だった。英語で戦没者の墓の方向を示す標識があったが、矢印の方向に道は見えなかった。斜面の多い場所で、兵隊にはきつかっただろう。管理事務所に置かれたゲストブックには旧日本軍人のものと思われる書き込みがあり、そこが多くの戦死者が眠る鎮魂の森だと書いてあった。

 野生で観察できた主な動物は以下の通り。オランウータン、ゾウ、サイなどの大型絶滅危惧種は見られなかった。

テングザル:鼻がでかく、仕草が人に似ている。絶滅危惧種。葉っぱばかり食べていて普段は動きが鈍いが、走るとまぁまぁ早い。
カニクイザル:小さくてすばしっこく悪戯好き。大抵は群れていて、何でも食べる。人を威嚇・攻撃することもある。
ヒヨケザル:夜行性で30メートルほどもジャンプできるムササビのような動物。
髭イノシシ:髭の生えたでかいイノシシ。映画「もののけ姫」に出てくる「乙事主」に似ている。何でも食らう森の掃除屋。
各種リス・ツパイ:黒・茶色の種が中心。白色の種、シッポだけ赤い種もいた。
謎の大型動物2匹(頭):一瞬だけ体の一部が見えた。おそらく一匹はオオトカゲ、もう一頭は鹿。
イルカ:一頭だけ、川で泳いでいるのが見えた。
爬虫類:蛇、蛙、トカゲ、イグアナ、ヤモリなど。
虫類:枝や葉っぱの姿をして隠れている昆虫や、3本角のカブトムシ、真っ赤な巨大ムカデ、サソリ、蜘蛛など。
鳥類:梟(ふくろう)、鷲、鷹、ツバメなど多種。大きく優雅な嘴をもつサイチョウが見られなかったのが残念。

 アホだったのは、野生のワニが見たくてワニが頻繁に出没するジャングルを訪れて迷子になってしまったこと。気付いたら完全に藪の中状態で、焦りまくり。脳内から化学物質が溢れ出し、ジャングルで暴れること10分ほど、気合で道を見つけた。細かい経緯は省くが、道に迷ったのは完全に自業自得だったので、反省することしきり。

 植物はウツボカズラ(食虫植物)や各種寄生植物(絞め殺しの木など)が目に付いたほか、日本では見られない葉っぱの超巨大なものが印象的だった。

 毒蛇や有毒の昆虫なども多く見かけた。管理事務所に抗毒血清は置いてないので、毒性の高い蛇に咬まれたら死ぬ可能性は極めて高い。木々の緑に隠れている緑の毒蛇に咬まれたら、2時間ほどで死亡するとあるガイドが言っていた。それでも、蛇に咬まれて誰かが死んだという話は聞かなかったので、毒蛇は恐るるに足らないということなのだろう。

 今回の旅で更にジャングルが好きになった。たぶん性に合っているのだろう。多くの観光客は自分をジャングル・ガイドと勘違いしていた。人類の祖先はかつてジャングルを捨てて草原に出たが、私はジャングルに戻りたいと思う。


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